2014年9月17日水曜日

マイクロモーターの性能

よくモーターをKV値で判断しますが、どうも性能を示す指標とは違っているように思います。
KV値の定義は1V時の無負荷回転数ですから、同じ電圧で良く回る方がなんとなく性能が良いように思います。
しかし、実際いろんなモーターを使ってみると、回転は上がるけどトルクがないモーターがあります。
KV値を決める要素は

1.磁力の強さ
2.巻線の太さ
3.巻回数
4.モーターの大きさ、モーターの重量

などですが、4.のモーターサイズというのは、でっかいモーターはちょっとの電圧ではなかなか回らないし、大きな電圧で回すのでサイズの大きなモーターほどKV値が小さくなりパワーもあるのは直感的に理解できます。

では、同じサイズだと、磁力が強いほど、巻線が太いほど、巻き数が多いほどKV値は小さくなります。KV値が小さい=回りにくい=磁力が強い です。磁力を強くするには永久磁石の性能を上げる、電磁石の巻線数を増やす、大きな電流を流すです。しかし、巻き線が細ければ抵抗が大きく電流が少なくなって回らないために見かけKV値が下がったり、太い線は物理的に巻き数が減ってしまうなど現実にはいろいろと障害が出てきます。

一方、モーターの性能を端的に表すのはいわゆるパワーがどのくらいあるか?ですが、パワーは電気的にいうと電力ですから電圧×電流ですし、力学的には回転数×トルクと表せます。トルクは磁力の強さに比例します。

今回はマイクロモーターを2Sで使って100サイズのヘリを飛ばす場合に一番パワーがあるとはどういうことか?を考えます。

まず、前提となるKV値を求めます。
ここで考慮することはモーターではなくESCの性能によって最高回転数が決まってしまう事です。
ESCにもよりますが70000回転から80000回転がESC側で決まる最高回転数です。
なので、14000KVのモーターを2Sで使っても132000回転迄回ってしまうので意味がないです。
2Sで使える最高KVは大きくても12800KVまでです。ESCの性能によってはもっと低くなるかもしれません。

ということを踏まえて、
ローター回転6500RPM、メカの効率を0.85で飛ばすことを考えると最高回転数の70%くらいにガバナーをセットアップして6500RPMが実現できれば、フルパワーが要求されるフルピッチ時でも6500RPMを維持でき、パワーのいらないホバリング時でもそこそこの効率で飛ばせそうです。
これを逆算するとギア比が8なら11800KVのモーターが良いということになります。
計算式は
目標回転数÷余裕度÷メカ効率×ギア比÷1S電圧÷セル数=6500÷0.7÷0.85×8÷3.7÷2=11800KV
となります。
ギア比が6.1ならやはり8000KV位が良さそうです。

ここからが本題ですが、(と言っても私の勝手な解釈ですので真偽のほどはわかりません)

11800KVや8000KVのモーターなら何でもいいかというとどうも違うようです。
前回の8000KVは不満で今回の12000KVは満足した理由があるはずです。

そこで、モーターをLCRメーターで計測してみました。
測ったのは10khzの交流に対するインダクタンスとリアクタンスです。


HK14000は買ったままのモーターです。zyunnsei12000は、今回満足の手巻きモーター、temaki12000はKV値を下げようとして細い線を使ったモーター、temaki18000は手巻きを始めたことに製作した14000を目指したのに永久磁石の消磁でKV値が上ってしまったもの、temaki8000は細い線を使ってKVを無理やり8000KVにあわせたものです。

モーターによってかなりの差があります。
パワーを出すためには電流を多く流す必要がありますが、抵抗が大きいと電流は流れません。
とすると抵抗は小さいほうがよさそうです。

インダクタンスは基準電流における起電力の大きさですから、これが大きいほうが磁力は強くなると考えられます。磁力が強いとということはトルクが大きいしKVは低くなる方向です。
結果インダクタンスが大きくリアクタンスの小さいモーターが性能が良いことになります。
ただ、この測定数値そのものはどういう数値かはわかりません。この数値に1Sの電圧をかけてもとんでもない電流が流れることになります。
実際のモーターはデルタ巻やスター巻など種類がありますし、2相を同時にオンするタイミングもあるので実際流れる電流とこの抵抗の関係は良く解りません。が、相対的な傾向はわかりそうです。

前回使って不満だったtemaki8000はインダクタンスが40μHもあってリアクタンスが1.4Ωですから両方とも他のモーターと比べて一桁数字が大きいです。磁力はそれなりにあるものの電流が流れない=パワーがないモーターということになります。逆に18000KVは、回転数は上がるけどトルクのないダメダメモーターのはずです。

ではなぜこんな違いが出るのかですが、巻線は12000KVは0.18のポリウレタン線ダブル9回巻に対して0.15シングル15回巻です。
余りパワーのことを考えずにKV値だけを目標に合わせた結果だと思うのですが、細い線で巻き数が多いので線の長さが長くなり抵抗が大きく、巻き数が多い分インダクタンスは大きいのだと思います。

zyunnsei12000の方はダブル巻してますが秘密はここにありそうです。交流の場合周波数が高くなればなるほど表面を流れる電流が多くなり中心部が減ってくる表皮効果があります。例えば同じ断面積の0.1mm4本と0.2mm1本では表面積はなんと2倍0.1mm4本の方が大きくなります。しかも、小さな線を数多く巻いた方が線と線の隙間が少なく密度高く巻けるので巻き数も増えます。2倍長く巻いても抵抗は同じでインダクタンスは倍のモーターが作れそうです。こんなことが影響してモーターの性能に差が出たのでは無いかと思ってます。

この理屈でつじつまが合わないのは、hk14000に比べてzyunsei12000の方がインダクタンスが小さいのにKV値が小さいことですが、この二つのモーターはかなり重量が違うのとスター巻とデルタ巻の差があります。この差が出ているのかもしれませんがはっきりわかりません。

これをもっと積極的に利用してギア比を下げて(61:10=6.1)8000kv程度のモーターを使ってみたいものです。
最初に書いたようにKV値はモーターサイズに一番関係が深そうですから、100サイズ搭載の小さなボディーのマイクロモーターでパワーのある8000KVを求めるのが間違っているかもしれません。
しかし、もっと細い0.1mmポリウレタン線を多重巻して抵抗を増やさずにKV値が下げれれば実現できるかもしれません。
もくろみとしては表の赤字の部分、目標と書かれたところの0.1mm8本10回巻ができれば8000kvのモーターができるかもしれません。
が、実際はポリウレタン被膜の厚みがあって10回は無理そうですし、0.1mmのポリウレタン線を持ってないので試すことができません。残念!

3 件のコメント:

  1. 待ってました! 時系列まで含んだ詳細情報ありがとうございます。

    ヘリのサイズとギア比がそう大きくいじれないので目標Kvは6000~10000くらいまでと決まってしまいますが、そうするとパワーを決めるのはほぼトルクの大小だけの勝負になりますよね。

    トルクはnobさんの考察どおり、線が太いか巻き数が多いか、で大きくなりますが、マブチモーター先生の資料によると巻き数の方は回数に比例して線の長さも延びるので抵抗も比例して増えてしまい、Kvは下がるもののトルクは増えないとされているようです (実際ヘリに載せるときはモーターの抵抗に加えてESCと電池の抵抗が乗っているので巻き数に比例するほどは抵抗は増えないですが)

    線の太さと表皮効果の関係については考えたことが無かったので興味がわき、野暮かもしれませんが数値的にどの程度効きそうかググってみました。
    ヘリに載せるという前提でモーター回転数は50000rpm程度で使うとすると、電気的な周波数は6ポールモーターの場合3/60倍することになるので2500Hz前後です。この周波数帯で表皮効果の深さをwikipediaのグラフで見ると、深さ1mmくらいで1/eに減衰するようです。1/eは減衰しすぎとしてこの1/4の効果まで許すとしても、深さ0.25mmで80%に減衰、という程度なので、今使っている線材よりさらに細くしても劇的な効果は望めないかもしれません。
    それよりも、temaki8000は断面積で他のモーターに対し2倍から3倍、長さにおいても1.5~3倍の差があるのでこれらの総合力で抵抗値に一桁の差がついてしまったように思います。

    それと、揚げ足取りのようですみませんが、リアクタンスは交流インピーダンスから抵抗成分を取り除いた純粋な虚数部分なので、コイルの場合にはインダクタンスとほぼ同じ性質のものを指します。たぶんLCRメーターの場合、Rとはリアクタンスではなく直流抵抗と同じレジスタンス成分を意味していると思います。

    と、くどくど書いておいてやっと質問ですが、線の太さに限界があるとするとトルクを増やすためにもうひとつ、磁石と鉄心の強さが重要な気がしてきました。手巻きのやりかたでどうこうできる部分ではありませんが、nobさんの比較している中で、モーターのサイズやコギング強さなんかでなんとなく磁石の強さを想像すると、パワーとの相関はあるでしょうか?

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    1. ESCのPWM周波数はblheliの場合highで25khz、lowで10khzなので2.5khzではないと思います。
      モーターによって差があるので何とも言えないのですが、直流抵抗モードと10khzの抵抗では単線巻とダブル線巻で少し差があるので少しは表皮効果もあるかもしれません。

      リアクタンスの説明良く解かりません。直流抵抗なら周波数は関係ないと思うのですが、このRは周波数を選べます。それに別に直流抵抗測るモードもありますし。

      磁石の強さとパワーはもろに影響します。けど、強い磁石のモーターは重いので(hp08とhk14000では倍の重さがあります)100サイズではどちらが有利なのかわかりません。

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    2. あぁぁ、すみません。PWMのことをすっかり忘れていました! おっしゃるとおりですね。少なくともPWMが効いたときの発熱や効率には違いがありそうですよね。

      リアクタンスはすみません、直流抵抗という表現は間違ってました。
      LCRメーターは交流を流してインピーダンスを計り、その角度(虚数)成分と半径方向の成分をLとRという名前で分離して教えてくれるものだと思います。なので、角度方向の値がインダクタンスやリアクタンスと呼ばれるもので、Rは抵抗ではありますが、まさにいま話題になっている表皮効果とかで周波数によって値が変わることがあるので直流抵抗と同じ値とは限りませんでした。

      磁力はやっぱり影響大ですよね・・・。HP08まで行くと確かに重過ぎるんですが、HP06とC05XLの重さはほとんど同じなのに磁力もパワーも大差があるので、なぜこんなに差が出せるのか不思議です。HK14000もサイズから考えると本当にすごいパワーですよね。

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