2016年9月21日水曜日

移動運用でのXPOコンテスト参加とアンテナ比較

9月17日から20日まで福井県小浜市に行ってました。その間、移動運用しましたが、丁度XPOコンテストがあり1時間だけ参加しました。
持って行ったRIGは、KX3,PX3 とバッテリー駆動の中華製安物ATU。Android端末です。
ZEKのフィールドデイでやったように、Androidで編集したメモリーを使っての運用で、パドルは一切使いませんでした。ただタブレットのキーボードに慣れてなくて入力が難しくログは手書きでした。しかし20局を超えるとダブりのチェックが手書きでは難しく1時間で止めました。



持って行ったアンテナは2本でCHCで製作したVCHとelecraftのbudistickです。(オリジナルのページはこちら。)


7MhzのみのQRVでしたが、この移動中にアンテナの比較ができたのでレポートします。

VCHは中々性能がよく、15出力ですがコンテストということもあり1時間で全国20局とQSO出来ました。

局の場所は小浜の市街地で海抜は2mくらいです。3階建ての屋上にアンテナを設置したのですが、茅ヶ崎の自宅よりはノイズは少ないかと思っていたのですが意外にいろんなノイズがあるようです。
写真の遠景に写っているのは若狭湾ですが、南側は山に囲まれあまり良いロケーションではありませんでした。

budistickはノイズレベルが常時S9位あり、信号がマスクされて聞こえません。budistickのSWRは写真の通り7.04MHZあたりに同調しています。ラジケーターは0を指してますがKX3が示すSWRは1.5程度です。
上の写真のような位置関係のアンテナ同士で、同じRIGで受信した結果の比較写真です。

VCHの受信状況

budistickの受信状況

budistickのSWR調整後

VCHはPX3のバンドスコープ上にはっきり信号が見えますが、budistickはノイズばかりです。結局設置しただけで使えませんでした。

アンテナの違いでこんなにノイズレベルが違うとは思いませんでした。

この結果から、budistickはノイズの少ない山の上とか、アンテナの短縮率が低くなるHFハイバンドでしか使い物にならないようです。今度静かな場所に移動してハイバンドで試してみたいと思います。

それにしてもバッテリー駆動のATUが思ったより整合範囲が広く100Wまで使えて中々グッドです。

場所:小浜市

2016年7月18日月曜日

移動用RIGの製作(貴田電子 KEM-TRX-2B)

製作といってもKITを組み立てて少し改造を加えただけなのだが。
ベースとなるKITは、貴田電子7,10MhzトランシーバーのKEM-TRX-2Bというやつで、7メガと10メガの2バンドCW専用機。

ネットを見ているとham関連でもいろんなものが売っている。
特に安くてつい購入ボタンを押してしまうのがe-bayというショッピングサイト。
ここでは、7Mhzのダイレクトコンバージョントランシーバーがわずか400円で買える。
しかも送料只!ほかにもいろんなものが安く売ってるが、うたい文句と実際が大きく異なることは少なからずある。そんな中で貴田電子のKITは純国産で少し高いが期待していた。

この中華製KITの話題は別稿に譲るとして、今回はこの国産TRXを組み立ててみた。

期待が大きかったのか、完成はしたが今一の感じ。クラブのOMに聞いてもあまり良い評判は帰ってこなかった。

一番気になる点は、ノイズの大さと内部発信があることで、あまり使う気になれなかった。セッティングの数値にRITの値を使うというのもなかなか使いにくい。

しかし、中華製と違ってマニュアルがしっかりしていることもあり、半田付けの経験があれば割と簡単にできてしまう。
e-bayのは説明書など全くついてこないものもあるからこの辺は大きな違いだろう。その分値段も良いのだけれど。

割と高出力で3W程度出ているし、エレキー内蔵なので手間いらずだが、
上記も含めて気になる点をまとめると

1.ホワイトノイズ?が大きい・・・回路内部のノイズだろうと思うがサー、ザーという音がバンド全体にかなり大きく聞こえる。

2.ケースが必要。商品ページの写真は本体基板にLCDがくっついているが、説明書では3cm以上離さないと発振するとなっていてケーブルがついてくるが、これではLCDが安定せず裸の基盤では持ち運びができない。しかも、LCDを離しても発振する。

3.KX3やIC7300などに比べて感度が低い。(ノイズのせいもあるかもしれない)

4.イヤホンが必要

5.PX3やIC7300のバンドスコープを見慣れているとLCDの周波数表示だけでは使いにくい。

ということで、少し改造してみることにした。

まずケース。少し大きめのを選んで回路を追加できるようにした。


次にホワイトノイズだが、最初、今はやりのDSPを使ったAFフィルターを使ってみた。確かにノイズは小さくはなるが、何とも音がくぐもった感じで好きになれない。
で、パッシブLPFを作ってみた。回路はCQ出版の”作りながら理解するラジオと電子回路”の記事を参考に、というかそのままパクって、イアホンジャック手前に挿入しただけだが、これは素晴らしい。抵抗を入れたので出力が落ちているが全くと言ってもいいほどノイズが消えてほとんど聞こえない。入感するとCW音だけが素直な音で聞こえてくるので大変気持ちが良い。ついでに内部発信の音も消えてしまった。

FT-50-77トロイダルコアにエナメル線0.4mm80回巻き2個とセラミックコンデンサで構成されて電源不要のローパスフィルタ。
(同じ基盤に載っているレギュレータはスピーカアンプ用の9V電源でフィルタとは関係なし。)

ということでイアホンは疲れるのでスピーカーで聞きたい時があるため、300円で買ってきたスピーカーアンプを入れてイアホンを外すとスピーカーから音が出るようにした。


配線で隠れて見えないけどスピーカーの上にあるのがアンプ。

感度の問題は、プリアンプを入れてみることにした。通常だとノイズばかり増幅されてあまり聞きやすくはならないが、AFフィルタでここまでノイズが消えるとRF段にプリアンプを入れても大丈夫かもしれないと思ってやってみた。入れたのは前にノイズキャンセラに使った小信号広帯域FET増幅器(トロイダルコア活用百科に載ってるゲート接地のアンプでHF全体に+12dbほどのゲインがあるそうだ)
ここで困ったのが、送信時にプリアンプを切り離す必要があるが、この貴田電子のキットはPTT出力が無い。で回路図とにらめっこして。PICの26番ピンがTX-CRLらしいのでここから信号を取出し、リレー用にトランジスタスイッチをかましてリレーを動かすことにした。


この基盤がPTT回路でリレーの横のトランジスタがPTTスイッチになる。

基板の下にあるプリアンプ

ほとんど見えません。

ケース内部全体は

こんな感じ。画面右のほうが空いてるみたいだが、LCDにぶつかるので空けてある。画面下の空いてる部分に送受信時使えるBPFを入れられるスペースを空けてある。

最後に、バンドスコープだが、これは難問。もともとこのTRXは中間周波数を持つヘテロダイン方式で、SDRで使うダイレクトコンバージョンではない。

考えられるのは、
1.アンテナ端子を分岐し7Mhzの信号をそのままRTLSDRのドングルに入れる
2.中間周波数が4Mhzなのでクリスタルフィルター前の広帯域の信号を取り出し、同じくUSBドングルに入れる

2のほうがイメージ混信など少なくてよさそうだが、このキットはIFミキサを1チップICで処理してるみたいでIFを取り出す場所がなかった。で、プリアンプ後の信号を別のコネクタに出力し別付けでIQ信号を取り出すUSBドングルをつけることにした。

SDR用7Mhz出力(というか同調回路がアンテナ以外無い場所から取り出してるのでHFの信号がすべて出力されることになるが)

部品が入手できたら7Mhzのバンドパスフィルタを入れようと思う。(ただしこれでは10Mhzは対応できない。IFの4Mhzを使えば7,10関係なく使えるのだが。まあ10Mhzは使わないので無視することにした)

SDR用のI/Q信号はドングルが生成してくれるのでこれをフリーソフトのHDSDRで復調すれば原理的にはバンドスコープができる。

e-bayで買った1000円のVHFワンセグUSBドングルとHFを100Mhzアップコンバートするコンバータ

タブレットパソコンにフリーソフトのHDSDRをインストールし、USBドングル経由で接続で繋いでみた。

画面詳細

ちゃんとCWの信号が見える程度に復調してくれるが、タブレットの性能が悪いのかTRXから出る音とコンマ何秒か遅れて聞こえる。が、バンドスコープとして使うなら問題なさそう。

しかし、自分が送信してる時にこのSDRをミュートする方法を探さないと飽和して使い物にならなくなるし、多分プリアンプが焦げそう。今後の課題!

エレクラフトのKX3と大きさを比べてみた。

KX3があれば移動はこれでできるじゃないと言われそうだが、こんな高価な機械では傷つけそうで持ち運ぶ気にはなりません。

2016年2月4日木曜日

3.5MHz VCHアンテナ製作編

設計編で決めた60μHのコイルの製作から始める。
材料は、DIYで買った園芸用アルミ線と100均ショップのプラスチック製味噌たると少々のボルトナット+端子

味噌たる一杯に巻くと90μHほどになったのでLCメーターで測りながらいいところでカットした。



アンテナ自体あとは電線があれば完成であるが問題は設置方法である。

既存で10mHのグラス製釣竿を使った7,10MHzのinv-Vが設置してあるのでこの竿を使うことにする。が、調整のためにこのアンテナだけの上げ下ろしができる構造にしておきたい。

で考えたのが、竿の最上部に滑車をつけてエレメントを上げ下ろしできるようにする事だが、元々このinv-Vは敷地ぎりぎりに立てているので北側からの風を受けると南側に竿がしなりエレメントがたわんでSWRが狂う欠点があった。そのためわざと北側にしならせて垂直に凧紐で引っ張って風を受けても南にしならないようにしていた。この紐をVCHの上げ下げ用のひもと兼用できそうなのでやってみた。

しかし、頭の中で想像するのと実際やってみるとは大違いで、滑車やワイヤーの重み特にコイルが重く竿がしなって形状を保つことができない。

次に思いついたのが、重いコイルを下から支えてやればしなりが少なくならないかということで、別に7mの釣竿の最上部でコイルを固定し下から持ち上げつつ、滑車を引っ張ってみたが竿の最上部は細すぎていくら上から引っ張っても滑車自体が下へしなりつつコイルを支えるはずの竿も変形するためなんとも奇妙な形になって使い物にならなかった。

これの改良で、釣竿の細い部分を使わず、形状を保てる太さの部分を使って支えてみた。これで何とか形になった。とはいえ相当不細工ではあるが。

風でしなる竿を引っ張って形状を保つ紐をVCHのホットエレメントの上げ下げに使ってしかもコイルの重量を上手く別の竿で支えながらの究極の相持ち構造の釣竿アンテナとして完成した。


コールド側は、最初地面にエレメントを這わしていたが、どうしてもリアクタンスが0にならないためそばにあった金属フェンスの最上部に這わしてみたところうまく行った。

コールド側エレメントの処理




エレメント長の調整後のSWRカーブを測定したのが下の図(赤線がSWR特性)


シミュレーション時のSWR特性は


エレメントの長さは周囲の影響でシミュレーション通りとはいかなかったが、帯域幅はカーブが示すようにかなりシミュレーションに近いアンテナが出来上がった。

製作費も安くATUのような機械仕掛けの調整機構が無くて、高々(?)10mで3.5MHzにQRVできるようになったので満足している。飛びはこれからだが、かなりよく聞こえるアンテナに仕上がっている。惜しむらくはもう少し見てくれを良くしたいところではある。

P.S.
このアンテナで3.5をワッチしているのだが、コールサインを総務省の電波利用ホームページ 無線局情報検索で検索してみると1KW局がたくさん出ておられる。さすがベテランのバンドで、ちょっと出るのが怖くなった。


3.5MHz VCHアンテナ設計編


3.5MHzバンドはアマチュア無線に割り当てられた周波数帯としては低い周波数の部類に入りベテランが多いバンドらしい。特徴は夜間に国内QSOが安定して行えるらしく国内遠距離でのラグチューが盛んに行われている。もっとも強力に入感する局はハイパワー局らしいが。

しかし、低い周波数=波長が長いということであり、アンテナはよほど広い敷地がないとダイポールなどそう簡単には設置できない。一般的には場所をとらない垂直系が多いと想像できるがそれにしても1/4波長で20mだからフルサイズはなかなか難しい。コイルで短縮するしかなさそうである。

一番楽な方法はRW(ロングワイヤー)+ATUで適当な長さのワイヤーを屋根越しに逆Lに張って、ATUで強制的に同調させる方法だが、試みた結果、感度・飛び共にいまいちの感覚だった。ATUの効率が悪いのかカウンターポイズが悪いのかわからないが、あまり好きになれない。

そんな折、所属するクラブの講習会で7MHzのVCHアンテナ製作講習が去年の秋にあった。完成したアンテナを使ってみたが予想以上に飛びが良かったため、何とか3.5Mhzでもできないか検討を始めることにした。

ググってみるとVCHというのは開発者のコールサインらしいが、別にvertical coil harfの略でもあるらしい。ホット側のエレメントの中間にコイルを入れた垂直アンテナという意味だろうか?
しかし、7MHzでの製作記事はググるといろいろ出てくるし開発者の製作記事がCQ誌に載ってたりするのでまねれば製作自体は簡単であるが、3.5MHzでの製作記事は見当たらない。ということは自分でトライ&エラーを繰り返すしかない。

VCHの特徴はコイルをホット側エレメントの中間に配置することで実長を長くせずにオフセット給電して電流分布をコイル部分で最大になるように調整同調させることで、本来の垂直アンテナの理論インピーダンス36オームを給電部オフセットの効果で50Ωに近づけ,更に電流分布をコイル部分で最大になるようにすることであたかも給電部が実際より高い位置にあるのと同じ効果が得られる事で飛びが良いと評判のアンテナである。

MMANAで、講習会で製作した7MhzVCHをシミュレートしてみた絵

赤線が電流分布、赤丸が給電部で、この二つがダイポールやバーチカルアンテナでは一致するがVCHではずれるのが最大の特徴
(赤×は集中定数=延長コイル)

トライ&エラーといってもやみくもにやっても仕方がないので、とりあえず7MHZのサイズを2倍にしてみたがまったく同調せず。ここで一旦あきらめかける。この段階で調整用機器はSWRメーターと自作のアナライザーだが広い範囲のスキャンができずどの辺に同調しているかすら皆目見当がつかない。

まずはアナライザーをそろえることから始めた。
候補は、

SARK100 11000円


MR100 8000円



他にはラズパイを使って自作する事もできそうだが、安易に安物を購入することにした。MR100である。EBAYで買える。電池駆動出来ないので外では使えないが、私のシャックとアンテナ位置では屋内使用で問題ないし、いざとなればバッテリーパックを外付けできる。何よりパソコンにデータを送り広範囲にわたってグラフ表示してくれるところが気に入っている。

アンテナシミュレーションソフトは今回は4NEC2を使ってみた。パラメーターの設定が色々できて変化させた時の最適化がMMANAより複雑にできる。

シミュレーション結果は
1.VCHの特徴を大きく出したセッティング(コールドエレメントを短くしてコイル容量を大きくした場合)


2.コールド側を長くコイルの短縮率を少なくした場合


シミュレーション条件は、製作の事を考えて、最高高さは一定(15m)ホット側エレメント長固定(3.85m)、コールド側は指向性を考慮して途中から2本に分岐し180度向きを変えて配置として、コイル定数とコールドエレメント長を変えてみた。

コールド側 長さを6m固定にしてコイルを変化させた場合
74.56μHで同調しその時の電流分布が1.の状態

逆にコイルを60μHに固定しコールドエレメントを変化させた場合
13.62mで同調し電流分布は2.の状態になった。

違いは電流分布以外に帯域幅である。2パターンを比較すると、SWRが2以下の範囲がかなり違うことがわかる。短縮率を上げると帯域が狭くなるのが良く解る。1.はオフセット効果は出そうだが帯域が狭くアンテナチューナー併用でないと使えないので、今回は2.で行くことにした。
2.のSWR

次回製作編につづく